佐田竜一先生

 2003年 大阪市立大学医学部 卒業後

  JA長野厚生連佐久総合病院で初期研修医・後期研修医

 2008年 天理よろづ相談所病院 総合診療教育部・感染症管理センター 医員

当院は、全国に先駆けて昭和51年に総合診療方式による研修制度をスタートさせました。研修医は10ヶ月間の内科研修を総合病棟で過ごすため、彼らに対する教育の多くは我々が働く総合病棟で行われます。上級医が研修医を教え、成長した研修医がいずれ上級医として指導をする屋根瓦式の教育方針が文化として根付いており、研修医教育はこの30余年、脈々と受け継がれています。彼らのロールモデルとなれるよう、精進する毎日です。

 

Q1  医者になった理由を教えてください。

 

 理由のひとつに親のすすめがありました。自分の親は乾物の問屋をやっていて、売店や卸問屋が昔はいっぱい店があったのですが、今では軒並みつぶれてしまい、親の店も吸収合併されてしまいました。親は子供には何らかの資格のある仕事に就く事をすすめていて、特に医者になる事をすすめていました。

 

二つ目の理由は高校時代に仲のよかった友達の影響があります。友達は体育の授業中に走り高飛びで背面飛びをした際に頚椎損傷になってしまいました。四肢麻痺となりリハビリを12年頑張って手は動くようになったのですが、車椅子生活となってしまいました。友達がそのような状況になった時、何回かお見舞いに行って励ましたりしたのですが、自分には何も出来ませんでした。この経験から怪我や病気で人の人生が変わってしまうことを実感し、こういう人を治してあげたいと思い医者を目指しました。

 

 

Q2  他の科と比較して今の診療科のメリットとデメリットを教えてください。

 

学生時代は麻酔科医を目指していました。あまり勉強はできる方ではなかったのですが、実習で行った病院で麻酔科に所属し、そこの先生から熱心な指導を受けました。そこでいろいろな手技などを患者さんに同意を得て、実技も含めて詳しく教えていただきました。その方の影響を受けて麻酔科医になりたいと思っていました。麻酔科医はオペ室でいわばコンダクター的な役割を果たしている点も魅力だと思いました。

 

実際臨床をやってみても麻酔科は面白いと思いましたが、内科(総合診療科)も経験し、そこでは患者さんと話をして、状態をリアルタイムにみながらコンダクターとして動く事に楽しさを感じました。2年目の途中まで迷っていましたが、そのときに学んでいた先生がかっこよく思って今の診療科に決めました。

 

他と比べてどうかと言われると比較は難しいです。

 

 

Q3  研修医や若手時代の苦労や、頼りなった先輩からの一言、辛いときの乗り越え方を教えてください。

 

研修していたのが田舎の病院で、コンビニまで歩いて10分ぐらいかかる所でした。車も持っていなかったですし、気温-15℃で外に出歩く事は大変なので、本当にご飯が食べられなくて飢えるのではないかという命の危機を感じることはありました。

 

その他には・・・その当時は、ちょっとマイナスの評価から始まって徐々に頑張っていけば、よく見られる(よりよい印象になる)のではないかと思っていました。だから病院に最初に行くときに鼻ピアスに茶髪で赤い靴を履いて行った時には、まぁ激烈に起こられましたね。本当に怒られました。そういう厳しい時代もありましたね。

 

先輩にはすごく恵まれていました。とび抜けて出来る先生もいらっしゃったのですが、身近にいろいろな悩みを聞いてくれる先生が多くいらっしゃいました。2年目の先生が話しやすくて相談すると「一緒に勉強しよう」「一緒に練習しよう」と言ってもらい、競争しながら毎日実技の練習をし合ったりしていました。ちょっと上の尊敬できる先生が同じ立場でみてくださっていたのがよかったですし、自分もそうなりたいと思いました。

 

あとは息抜きで3ヶ月に1回ぐらい都会にでて買い物するなど、自分でうますガス抜きすることが大事だと教えてもらいました。

 

 

Q4  多職種との関わりの中で心掛けている事、難しいと感じる事、失敗談などを教えてください。

 

多職種との関わり中で意識している事は3つあります。ひとつは必ず自分の所属と名前を言う事です。医者は「みんなが自分のことを知っているし、偉いんだ」と思いがちなので、“自分の所属と名前を言ってお願いする”“名前を覚えてもらう”ことを意識しています。当たり前だと思っていると多職種との間で勘違いが起こってしまうと思います。

 

2つ目は“チームである事”を認識することです。相手(多職種)もプロなので患者の捉え方がそれぞれ違うと思います。たとえば看護師であれば看護学を学んでいて、病気を治すことも大事ですが、どうしたら患者さんが安心した生活を送れるかを考えていますし、ケアマネーシャは自宅ではどのようなケアプランが必要かと考えていたり、それぞれプロとしての考えがあります。そういうところに自分もプロとして立ち会っているということを意識しています。だから必ず敬語で話をしますし、皆さんはどう思いますかと困ったことを聞くことが多いです。患者さんの医療は“これが答えだ”という事がないことも多いので、プロの集団で話すことが必要だと思います。

 

最後やっぱり挨拶ですかね。シンプルですけど、人とすれ違うときには必ず「こんにちは」「おはようございます」など声をかけて、話しかけやすくなるように意識しています。

 

 

Q5  ライフバランスについて気をつけている事はありますか?

 

 最近子供が生まれたので特に考えるようになってきました。自分にも家庭での役割もあるので、週末はなるべく一緒に過ごすようにしたり、朝子供をお風呂に入れてあげるなどしています。自分でもやりたいと思いますし、それがパワーにもなります。でもまだ足りていないので、出来たら132時間ぐらいあったら良いなと思っています。

 

 

Q6  キャリアとキャリアアップについてどうのように考えていらっしゃいますか?

 

 今後の自分について今年からカナダの病院に勤めるのですが、ここで5年以上勤めたいと思っています。この病院の総合診療や教育をよい方向に引っ張って行けたら良いと思っています。また自分の経験に繋がり40代以降の自分の医療の展開も変わるかなと思っています。自分は教育に深く関わりたいと思っているので、この5年間で教育学を学んでいきたいと思っています。 

 

 

Q7  医学生や若手の研修医に対してのメッセージをお願いします。

 

 積極的に活動をしている学生と平均的な学生では見ている層が違うと感じています。今がんばって活動している方に関しては、特に言うことはないのですが、医者になって今後3035年働かなければならないので、医者としての時間しか取れなくなるという事を意識してもらいたいです。勉強する事も良いと思いますし、高める事も大事だと思うのですが、今の期間はとても貴重なので、今出来ることを見つけることが大事だと思います。

 

平均的な学生に対しては、医者はすごく楽しいですよと伝えたいです。これでお金をもらえるということはすごい事だと思いますし、仕事としてはいい仕事を選んだと思います。自分はこれがすごく大事なことだと思っていて、今の医学教育では医者という仕事の楽しさを伝えられてないと思います。自分でそれだけ楽しい仕事であると感じられることが大事だと思います。楽しいと感じる事が出来れば、みんなもっと学びたくなると思います。

 

 

 

Q8  最後に医師としての楽しさはどういう点で感じられるかを教えてください。

 

まずは自分のスキル・人間力が試される点です。機械をなおすのとは違って、患者さんを良くするために、その人の想いに沿わなければならないですし、その人に関係する周囲の方々・家族・社会も含めて考えなければならないという点に楽しさを感じます。

 

また医者は適切なスルーパスを出すイメージで「いいシュートお願いします」と送り出す役割を持っていると思います。医者が先頭に立ってゴールを決めるのではなく、「この診断でいけると思うので、この治療で行って下さい!」とボールを送り出したら、いいキックを蹴ってくれるか、はたまた自分の投げたボールが体を貫くか・・・結構スリリングな仕事だと思います。自分のスキルの専門性が必要になり、それが患者さんの予後や一生を左右しかねないボールを出していると思うとドキドキします。そこで自分はこのアウトカムを高められるようにする事を意識しています。これが臨床の楽しさだと思います。