徳田安春先生

筑波大水戸地域医療教育センター水戸協同病院総合診療科 教授

沖縄県立中部病院内科、聖路加国際病院内科を経て2009年より着任。

認定資格

・日本内科学会認定総合内科専門医

・米国内科学会フェロー(FACP)

・公衆衛生修士号(MPH)

受賞

・2002年 沖縄県立中部病院ハワイ大学卒後臨床研修プログラム優秀指導医章

・2008年 日本プライマリケア学会優秀論文章

 

1.医師を選んだ理由

 

私は子どもの頃から体が弱く、小学1年生の時にリウマチ熱にかかりました。沖縄生まれ、沖縄育ちであり沖縄中の病院を回ったが治療できず、京都の病院で治療していただくことになりました。そのような経験をし、医療従事者が格好良く見え、素晴らしいと感じ、医療従事者を志しました。そして、高校生になった時に琉球大学医学部が創設され、医学部に行くことが具体的な目標になり合格できたということです。

 

 

2.総合診療科のメリット

 

患者さんは入院、退院、外来、在宅や施設と段階を進んでいきます。医師、ジェネラリストとして患者さんをケアするにあたって継続的に最初から最後まで中心的に舵取りができます。これは総合診療専門医の大きなメリットです。そして、総合診療専門医は医療系職種の中で中心的な存在であり、医療系職種とコラボレーションできる立場であり、それらをつなぐ役割を果たすことができると思っています。また、総合診療医はジェネラリストとして、その場にあった役割を果たすことができるとも思っています。

病気を治療するという視点以外に、パブリックヘルスに関する活動もジェネラリストには必要な視点です。地域や社会の健康増進にとどまらず、幸福とはなにか?地球環境はどうするか?など、医学を超えたマインドを持つことが大切です。ジェネラリズムという考えから医学を超えたマインドを持つことでイノベーションを起こすこともできます。私の場合は社会学者や言語学者などと共同研究を行っていますが、そういった活動も可能ですし可能性は広がっていると感じています。

 

 

3.新卒(研修医)のときの苦労、頼りになった先輩の一言、辛いときどのように乗り越えたか

 

新しく研修医になる者へのメッセージとかえさせていただきますが、最初の半年間はキツイです。最初はどうしていいのかわからないと思います。今まで6年間の勉強したことの使い方もわからないですし、応用もできないです。学校での座学的な学びではなく、現場的な業務プロセスを体で覚えていくしかないです。従って、最初の半年間は体力的にも本当に辛くキツイです。そこを乗り切ると、今までの勉強を応用できる次のステップが待っています。

辛い時も体調を崩さない・ストレスを溜めないことが大切です。時間がなくても、3食食べる(ポケットにおにぎりやサンドイッチを忍ばせて食べてください)、少しでもいいので睡眠をとる、家族や友人と交流をとる。それを戦略的に実施してください。最後に、自分の限界を知ってください。

 

 

4.他職種との関わりで心がけていること、難しいと感じること、失敗談

 

医師は“自分たちが中心的な役割を果たしている”という意識があり、エゴイズムが強いです。しかし実際はいろいろな現場(病院・診療・在宅など)でコメディカルの助けがあるから成り立っています。各職種は資格をとったプロですから、医療チームのメンバーとしてリスペクトして関わることが大切です。

医師はチームのマネージャー的な役割を果たす立場になるので、適材適所で各職種の強みを生かすというマネージメント力が必要になってきます。得意分野をどんどん伸ばす事で、各個人がハッピーに働ける職場になります。そんな職場に人も集まってきます。

世界の医学教育の中でマネージメントスキルが重要である事が認識されており、イギリスでは医学部の教育にも取り入れられています。コミュニケーションスキル、ネゴシエーションスキルなどがあり、マネージメントスキルを学ぶ事は、テストで良い点を取る事とは違う、いろいろなインパクトがあります。

 

 

5.ワーク・ライフバランスについて

 

今までの日本のトラディショナルな男の働き方としては、“家は奥さんに任せて朝から晩まで仕事に出る。奥さんが病気になっても帰ってこない。”という時代が長かったが、今は“ファミリーをケアする事”が必要です。普段言葉に出さなくても分かっているだろうと思っても、奥さんの誕生日・記念日には花を買って帰るなど、特別な日に上手くケアをすることが必要です。また仕事のオン・オフをはっきりさせて、仕事を終えたら早く帰る事。家族は“ひとつの自分の居場所”だと思って上手くケアする事が大事です。

医師は患者の為・医療チームの為に、すぐ駆けつけなければならない場面がありますが、医療職以外の人とのコミュニケーションを持ち、家族との関わりについて社会の人がどう考えているか理解することが大事です。

単身赴任・独身は疫学的に予後不良です。早く結婚する事をお勧めします。

 

 

6.医師のキャリアアップについて

 

自分が何かやりたいと思ったら場所を選ばず、どこにでも行った方が良いです。自分の居場所を固定せず、違う病院に移動してでも興味を持った事に挑戦した方が良いです。

 

 

7.学生、若手(研修医)に向けてメッセージ

 

日本の医師はすごい勢いで一人ひとりのパフォーマンスが伸びてきています。この10年間で研修制度が必修化されたり、各病院が競ってプログラムを充実させた事に加えて、日本人は元々まじめで優秀です。土日も夜遅くまで勉強するという、他の国ではありえない現象が全国各地で起こっています。

このため10年後には日米の立場が逆転し、日本の医師の方がいろいろな意味で(技術・知識面等)アメリカを抜いていると思います。私は総合内科の領域においては日本が世界の頂点に立つと予言しています。ぜひこの予言を皆さんに実現して欲しいです。

そのためには皆さんが世界中に情報を発信しなければいけません。世界に発信するツールとして医学英語を勉強し、国際的な雑誌・本などに発表するなどグローバルなチャレンジをして欲しいです。皆さんだったら出来ると思っています。